さて、ギター・スイッチングシステム(プログラマブル・スイッチャー)の素晴らしさをじっくりとお話ししましたが、今回は究極(?)とも言える、楽々とスイッチングシステムに組み込んであるエフェクターのプログラムチェンジをする方法についてお話ししましょう。

さて、僕はロックトロンのパッチメイトというスイッチングシステムを使うようになり、その便利さをひしひしと感じていました。
リハでもライブでも、その恩恵を受け

うーん、高かったけど、本当に買ってよかったな!

なんてウキウキでしたが、人間の欲というものは本当に際限がありませんね。

しばらくすると、フットコントローラーのペダルを踏むのも「何とかならんかなぁ」と思うようになり、自分はギターを弾くだけで、プログラムチェンジやパラメーターのコントロールさえも他でやってもらえたら最高だと思うようになってしまいました。

面倒くさがり屋というわけではなく、効率化を追求しただけですよ、ハハハ。

そこで色々と調べるうちに、まさにコレだ!という方法を見つけたのです。

究極のギター・スイッチングシステムに魅せられた!

確かギターマガジンかキーボードマガジンの記事だと思いますが、その当時、FENCE OF DEFENSEのギタリストである北島健二さんが、

エフェクターのプログラムチェンジはMIDIシーケンサーにやってもらっています。

というような事をお話しされていたのです。
これを読んだときは「コレだよ、コレ!」と思わず叫んでしまいました。

当時、僕がやっていたバンドは同期バンド。

同期バンドとは、MIDIシーケンサーを使ってシンセサイザーの音源を鳴らすなどして、そのリズムやタイミングに人間のプレイヤーが合わせて演奏するという形式のバンドのこと。
ドラマーはヘッドホンモニターしながらプレイすることになるので、特にドラマーにはかなりのリズムキープ能力が要求される。

バンド全体がこれにぴったりハマると、非常にリズムのいい演奏に聞こえる。
慣れてくると、正確なリズムの中でグルーヴを表現できるようになる。

バンドのメンバー構成はボーカル、ギター、ベース、ドラムスという4人編成でしたので、シンセサイザーや効果音などを、MIDIシーケンサーを使って鳴らしていたのです。
だから、ドラマーがシーケンサーから送られてくるドンカマ(クリック)を聴きながらドラムを叩き、それに合わせて他のメンバーが演奏したわけですね。

余談ですが、同期バンドのドラマーは本当に大変です。
生演奏とシーケンサーの信号がずれないよう、絶対にリズムを狂わせちゃいけないし、グルーヴも全て決められている状態で、それに合わせて叩くわけですから。

また、シーケンサーから送られてくるドンカマをモニターするためにヘッドホンをしながら叩くので、閉塞感や孤独感を感じるでしょうし、ものすごいストレスになるのはわかります。
ですので、もしもヘッドホンをして演奏しているドラマーを見かけたら、「お疲れ様!」と声を掛けてあげてください。

究極のギター・スイッチングシステム構築のコツ

さて、シーケンサーはMIDI音源のプログラムチェンジやパラメーターを変化させるもの、としか認識していなかった僕ですが、考えてみれば、シーケンサーはMIDI信号をMIDI機器に送ってコントロールするわけですから、当然、ギターのスイッチングシステムに組み込まれたエフェクターのプログラムチェンジにも対応すると、その時に気づいたんですね。

そこで僕はさっそく、MIDIシーケンサーにギターのプログラムチェンジ用のデータを打ち込んでみました。

しかも、ライブハウスなど、電力を大量に使う所では電圧が下がってしまう可能性があるので、万が一のシーケンサーの誤動作を防ぐために、プログラムチェンジのデータを数ティック(信号の間隔)ずらして同じものを2つ打ち込むようにしました。

これにより、もしも最初のプログラムチェンジ信号がうまくエフェクターに伝わらなかったとしても、直後に同じプログラムチェンジ信号を再度送りますので、これなら問題ないだろうと。

さらに念には念を、ということで、それでもMIDIシーケンサーに不具合が起こった場合に備え、MIDIマージボックスという、複数の機器から送られてくるMIDI信号を一つにまとめるためのユニットを使い、それにギターエフェクター用のMIDIフットコントローラーをつなぎました。

そうすることによって、エフェクターのプログラムチェンジを、シーケンサーからでも、ギターのフットコントローラーからでもできるようにしたわけです。
我ながら芸が細かいですな。

リハーサルでもライブ本番でもバッチリ!

そう言ったようなわけで、そのギターシステムをまずはリハーサルで試してみたところ、これが大成功。
メンバーも、

ヤマちゃん、スゴイよ、それ!

なんて大絶賛です。

いやー、それほどでもー

なんて、クレヨンしんちゃん状態で、まさに有頂天になっていた僕でした。

さて、リハでも問題なく動作したので、これならライブで使っても大丈夫だろうと、さっそく次のライブでやってみましたが、これも大成功でした。

オーディエンスの、

あのギタリストは足元のペダルを踏んでいないのに、何で音色が切り替わっているんだ?
ひょっとすると当て振りか?

なんて声が聞こえてきそうなくらい、前の席の人達は不思議がっていました。

当て振りとは、CDなどの音源に合わせ、歌や演奏するふりをする擬似的ライブのこと。
海外のミュージシャンが来日して、そのプロモーションのためにテレビ番組で演奏する際によく見られる光景。
実際には演奏していない点が残念ではあるが、海外ミュージシャンの場合はギャラとか契約内容とか、色々な要素がからむのでそうせざるを得ないということらしい。

さて、そんなようなわけで、ペダルを踏まなくてはいけないという制約から解放され、ステージを所狭しとばかりに動き回れる自由さから、このギターシステムが非常に気に入った僕でした。

もっとも、このシステムが組めるのは同期バンドだからというのはありますが、かなり便利なのは間違いありません。

しかし、同期バンドのギタリストには救世主のようなこのシステムでしたが、実はそこにギター・スイッチングシステムの大きな落とし穴が待っていたとは夢にも思わなかったんですよね・・・。