あなたは白を入れる、とか、黒を入れる、なんて言い方を聞いたことがありますか?

これは今ではあまり耳にしませんが、実はレコーディングにおける音楽業界での業界用語なんですね。
しかし、白とか黒なんて、言葉だけではその意味をまったくイメージできない。

レコーディングの現場でその意味を知ったが・・・

僕が初めてこれを知ったのはレコーディングの時でした。
ある楽曲で、演奏を途中でバスッ!とカットして、当時流行していたリミックス風にしようと皆で話し合ったことがあったのです。

で、その時、ディレクターが「よーし、じゃあ、ここに白を入れるか」なんて言ったのですが、業界初心者だった僕には何のことかサッパリわからず「?」って感じでした。

さて、白や黒を語るには、何十年も前にさかのぼらなければなりません。

大昔のレコーディングでは、今のようにデジタルレコーダーなんて物はなく、オープンリールというアナログのテープを使っていました。

レコーディングは、マルチトラックレコーダーの各トラックにドラムやベース、ギター、キーボード、ボーカルといった、たくさんの音素材を録音し、それらの音量や音質、定位などを決めて最終的にまとめるという作業です。
また、その過程で、各音素材、あるいは全体に色々なエフェクターを掛けるわけですね。

その際、演奏をいきなりカットして完全に無音の状態にするには、ディレイやリバーブといった残響音系のエフェクターがネックになります。

と言うのも、単に演奏をピタッと止めるなら、レコーダーの再生をストップさせればいいのですが、音信号の流れの関係で、ディレイやリバーブなどのエフェクト成分は残ってしまいます。
ですので、無音にするには、この残響音を何とかしなければいけないわけですね。

そこで考え出されたのが、全ての音素材にエフェクト処理した後、それらをいったん2ミックス(LとRのステレオにまとめること)としてテープに落とし、そこで処理すればいいってことなんですね。

やり方として、その2ミックステープで、音を完全に消して無音にしたい場所に紙をはさむのです。
すると、レコーダーの再生ヘッドではその部分を認識しないので、結果的に無音となる、というわけです。

そして、そのはさんだ紙が白だったことから、完全に無音状態にすることを「白を入れる」と言うらしいです。
また、その流れから「黒を入れる」とも言うようになったとのことですね。

ちなみに、そのやり方ではなく、無音にしたい部分のテープを切り取って前後をつなげるという、そんな荒業もあったみたいです。

まぁ、これが「白を入れる」とか「黒を入れる」の語源なのですが、アナログ時代はずいぶん手のかかることをやっていたものです。
当時のエンジニアさん達の知恵を感じます。
本当に頭が下がりますね。

現代のレコーディングでは・・・

しかし、今となってはPro Toolsに代表されるハードディスクレコーディングが主流ですから、簡単にそういった処理ができるわけです。
便利な時代になりました。

ただ、デジタルが普及するに当たってアナログテープのあの質感は失われていったわけですし、何だか複雑な気分ではありますね。