僕は大学を卒業後、一般企業にいったんは就職したのですが、本格的に音楽をやっていきたいと思い、しばらくしてから辞職しました。
そしてその後、以前からバンドのリハーサルに利用させてもらっていた、三鷹のSOUND STUDIO AI(サウンドスタジオ・アイ)というリハーサルスタジオでアルバイトをするようになったのです。

ちなみに、何年か前にたまたま三鷹を訪れた際、懐かしくて行ってみたのですが、残念ながらもう閉店していました。

そのスタジオは、寿(KOTOBUKI)やDIZZY RUCK、水琴窟といった、インディーズやメジャーで活躍していたそうそうたるバンド達が集まってくる、かなりレベルの高いスタジオだったんですね。

また、近くにある大成高校の女子高生バンドも集まる、実に家庭的な雰囲気の漂うスタジオでもありました。
無くなってしまったのが非常に残念です。

えっ?パーソンズが?

さて、僕の、そんなスタジオのあんちゃん時代の話です。
いつものように受付をしていると電話が鳴りました。

はい、スタジオ・アイです。

ARBオフィスと申しますが、リハの予約をお願いしたいのですが

(んー? ARBオフィス? もしかすると!)

僕はARBオフィスという言葉を聞いた瞬間に、誰がリハーサルに来るのかを理解しました。
ARBオフィスに所属していて、住まいがおそらく三鷹近郊・・・それはパーソンズしかあり得ません。
すると、やはり案の定、それはパーソンズでした。

ヴォーカルのJILLさん、ベースの渡邉貢さん、ドラムスの藤田勉さんは三鷹に住んでいるのは知っていたし、ギターの本田毅さんは確か荻窪に住んでいたはずなので、もうこれはパーソンズしかないでしょう!って感じでした。

僕にしてみたら、そりゃもう大興奮ですよ。
なにしろ、憧れのパーソンズ、憧れの本田毅さんですから。

僕は本田毅さんに憧れてシェクターのストラトキャスターを買ったし、デジテックのIPS33を始めとするエフェクター類もそろえてしまったほどだし。
ブラッドショウ・スイッチング・システムは、いくらなんでも高すぎて買えませんでしたが。

ついにPERSONZがやってきた!

さて、いよいよその日、ワクワクしながら受付に座っていた僕でしたが、もう時間の進み方が遅くて遅くて。

すると、やって来ました、本物のパーソンズです!

その堂々とした立ちふるまい、やはり貫禄があります。
でも、お話しした瞬間、非常にフレンドリーな方々だということがわかりました。
本物のスターはやはり偉ぶらず、フレンドリーなんですよね。

で、ボーヤ(ローディー)さんが機材を運び始めたのですが、

うわっ、俺も運びたい!

なんて真剣に思ったものでした。

さて、そしていよいよリハーサルが始まりました。
スタジオの扉はかなり厚手で、基本的には防音になっているのですが、それでもやはり音が外に漏れるんですね。
で、僕はその扉の前で聞き耳を立てて、ずっとパーソンズの演奏に聴き入っていました。

おおーっ、これこれ! 本物だよ!

なんて具合でした。

しかし、パーソンズの皆さんは休憩好きなようで、30分くらい演奏すると「休憩しよー!」なんて、外に出てきて、スタジオのロビーでジュースを飲んだりしてくつろいでいました。

僕たちスタジオの兄ちゃん姉ちゃんにしてみれば、本物のパーソンズがそばにいるというシチュエーションがとてもうれしかったですけどね。

でも、ギターの本田さんだけは、ずっとスタジオの中にこもり切りで、一生懸命エフェクターのパラメーターをいじっていました。
自分のサウンドに対して、ものすごく探究心がある方なんですね。
もはや求道者の世界です。

憧れの本田毅さんに話しかけてしまった!

そこで僕は、ぜひとも参考にさせていただきたいと思い、

あのー、見学させてもらっていいでしょうか

と、思い切って本田さんに話しかけてみました。
すると、「うん」というありがたいお言葉。

なので、その作業をずっと見せていただいていました。
いやー、本当に勉強になりました。
本田毅さん、その節はありがとうございました。

さて、そんな具合にパーソンズのリハーサルが進み、そして、いよいよ時間が来て終了となったのですが、その後、サインや写真に快く応じていただき、とても楽しい時間が過ごせました。

それまではパーソンズの皆さんを、テレビやコンサートでしか見たことがなかったわけですが、何だかとても身近に感じられ、僕の心も非常に温かくなったような気がしました。

これが、僕のアマチュア時代の一番心に残ったエピソードです。

余談ですが、ドラムスの藤田勉さんは、三鷹の江ぐちというラーメン屋さんによくお出でになっていたようです。
で、僕も江ぐちにはよく通っていましたので、その後も何回かお見かけしたものでした。